札幌ステラプレイス発 WEBマガジン

ステラ部

11.23
Sat
NOV 2024
週刊ステラ部 vol.6

五感で感じる
島時間

2023.06.01 Thu
M.Y.
アットアロマ [ CENTER B1F ]

 「島時間」という言葉をご存じだろうか。正確な時間にとらわれない、その島独特の時間感覚のことである。私はこれを感じるために、大きな島を出て小さな島に向かう。何かを食べたい、何かを見たいというよりも、何かを感じるために忙しない生活から離れるのだ。

 人々はここ数年で暮らしを見直し、忙しない日々の中で自身を整える方法が脚光を浴びてきた。それらに一貫して言えるのは、自分や生活を見つめ直す時間を作るということだ。島を訪れることも、通じるものがある。

 足元を撫でる波を眺める。潮風で肺を満たす。住人の言葉に体温を感じる。
海に溶ける夕日はどこか神聖に映る。いつもと同じ光を浴びているはずなのに。
 小豆島に向かう旅路で、『島はぼくらと』( 辻村深月 著 / 講談社文庫 ) という小説を読んでいた。こんな一節に出合う。「もう少し寝ていたいと思いながら、あたたかい布団の中で聞く波音は心地よい。顔にあたる小春日を受けながら、思う。ここが、俺の住む島だと。」

 私たちにとっては日常になっている、誰かにとっての非日常も存在するのではないだろうか。何かを感じとる心の余裕を失くし、ありふれた美しさに慣れてしまってはいないだろうか。生活にも、私たちの街でも、心弾むきっかけは溢れているはずだ。ほんの少しの気づきや心の解れが、いつもの風景を情景に変える。
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